2006年04月28日
遠野秋彦の庵創作メモ total 3250 count

オルランドの設定の一部は映画「緯度0大作戦」へのオマージュであるという補足

Written By: 遠野秋彦連絡先

 最近、タイトルに「オルランド」という言葉の入った小説をいくつか書いています。

 これらの作品群は、アトランダムに書かれた断片的な物語を読んでいくうちに、ふと気付くとそれぞれが繋がって1つの大きな世界をイメージできる……という構成を意図しています。たとえば、「オルランドの小雀戦闘機隊」に出てくる(というか現物が出てこない)バトルクルーザー「フィラデルフィア」とはどういうものなのかは、「オルランド戦艦建造秘話「カズサ誕生物語」」を読むことで見えてきます。また、「オルランドの小雀戦闘機隊」にちらっと名前が出てるアヤは、まさに「オルランドのアヤ」に出てくるハイパー・アンドロイドのアヤその人です。そして、未だに書かれていない話によってアヤが乗っているのがバトルクルーザー「カエサル」だという設定が披露されれば、「オルランドのアヤ」の舞台となる惑星に、アヤがどのようにして来たのかが見えてくるでしょう。更に、アヤがこの惑星に降り立った理由、アヤが生け贄に捧げられた後にどこへ行ったのかも、全てドラマが存在します。しかし、それらはストレートに語られるのではなく、あくまで断片が語られることになります。

オルランドって何? §

 この「オルランド」というのは、架空の国です。主に私が小学校高学年から中学生に掛けての期間に、学校から帰るために歩く時間が暇だったので、妄想して作り上げたものです。

 もちろん、子供の考えることですから、初期の設定はほとんど宇宙戦艦ヤマトの借り物のような内容に過ぎません。宇宙からの侵略者が来襲し、実験戦艦X-1が立ち向かい、徐々に新兵器が増えていき侵略者を打倒していくのがストーリーの骨格です。ちなみに、X-1のネーミングは、ゼロエックス号のもじりで、当初はワンエックスと呼んでいたこともあったような気がします(今これを書きながら思い出した)。

 しかし、単純に侵略者を倒してハッピーエンドとならず、逆に侵略者だった異星人を根こそぎ滅ぼした極悪集団として糾弾されるという展開は、子供ながら辛辣な展開をよく考えたものだと思います。(ここは、海のトリトンの影響か?)

 さて、この物語は、未来と過去に向かって拡張されていきました。(考える時間がいくらでもある子供って羨ましい!)

 未来に対しては、殺戮者として地球を追放されたオルランド人が死ねない身体をもてあまして生き続ける話。

 過去に対しては、いかにしてオルランドなる架空の国家が生まれ出ることになったのか……という経緯の話。

 オルランドの誕生は、大航海時代にまで遡る歴史を与えられます。

 その歴史の中で、オルランドは太平洋戦争の時代に、全長2kmもある核砲弾発射可能な戦艦や、双胴式で幅の広い飛行甲板を持つ空母を保有していたというドラマを与えられます。

 「いくらなんでも、当時の技術水準では無理だろう……」

 その通りです。

 しかし、オルランドには、19世紀頃から本国で迫害される不遇の知識人、文化人、学者を迎え入れるという活動を行っていた……、という設定が与えられています。

 革新的な考えを持つ者達は、迫害される経緯を持っていることが多いといえます。彼らを迎え入れれば、世界各国よりも科学技術水準を持つ国家が生まれます。しかし、そのような国家は各国から存在そのものが認められません。認めてしまえば、次々と移住者を生むだけだからです。ゆえに、オルランドとは、存在そのものが無かったことにされ、地図上からも抹消される幻の国となります。

 オルランド戦艦建造秘話「カズサ誕生物語」に登場する水上戦艦カズサ、シモウサを擁するオルランドとは、そのような設定を与えられた国家です。

緯度0大作戦という幻の映画 §

 さて、世界各国よりも進んだ技術力を持ちながら存在が認知されざる国家……というアイデアは、とある映画から得られたものです。

 それは「緯度0大作戦」というタイトルの日米合作の特撮映画です。

 権利関係の問題からビデオ、LD、DVDなどの映像ソフトとして日本で発売されることがなく、数少ないTV放映のチャンスで見るか、あるいは劇場で上映されるチャンスを待つしか見る方法が無かった幻の映画です。(私は、子供の頃に1回だけTVで見ることができ、その時に強く印象に残っていた)

 ちなみに、NHKで放送されたアニメ「ふしぎの海のナディア」で、ノーチラス号の進水プレートを発見し、あり得ない古い時代に進水したことになっていることに驚くシーンは、まさに「緯度0大作戦」のネタです。ほとんどアニメファンはその事実に気付くことはありませんでしたが、それは「緯度0大作戦」のマイナーさを考えればやむを得ないところでしょう。

 さて、現在書いている「オルランド」の一連の小説は、多くの他の作品から借用されたアイデアを含んでいることを、あえて肯定することを選択しています。なぜなら、それらを含めた子供の妄想に対して、大人から見た整合性のある解釈を与える試みとして書かれる作品群であるためです。そして、借用されたアイデアの元となった作品に対しては、敬意を払い、本作をオマージュとして捧げるという態度を取りたいと考えています。

 「緯度0大作戦」に対しても、まさにそのような意味で、オルランドの物語はオマージュであると述べたいと思います。

なぜそのことを慌てて今書いているのかというと §

 オルランドを巡る作品群とは何か……は、きちんと書いておこうと思っていました。

 しかし、今、慌ててこの文章を書いている理由は別にあります。

 実は、幻の映画だと思っていた「緯度0大作戦」のDVDがまさに今日発売されたことを知ってしまったからです。

 これはもう大焦りです。なにせ、2006年04月27日にオルランド戦艦建造秘話「カズサ誕生物語」という、まさに「緯度0大作戦」的設定を含む小説を公開したすぐ翌日に、「緯度0大作戦」のDVDが発売されるとは夢にも思っていませんでしたので。

 いや本当に、何気なくインプレスのAV Watchの今日発売のDVDリストを斜めに見ながら、このタイトルを見たときにはぶっ飛びました。

 人間、長生きするものですね!